人気K-POPグループNewJeansのメンバー5人が、所属事務所ADORとの専属契約を解除した。11月28日の記者会見で発表されたこの衝撃的なニュースは、韓国、ひいては世界のエンターテインメント業界に大きな波紋を広げている。
契約解除の背景には、ADORの元代表ミン・ヒジン氏と親会社HYBE間の経営紛争が深く関わっている。代表権争いやNewJeansメンバーへのいじめ疑惑に関する国会ヒアリングなど、様々な問題が複雑に絡み合い、最終的にミン・ヒジン氏がADORを去る事態にまで発展。NewJeansメンバーは、彼女の後を追う形で事務所を離れる決断をしたのだ。
しかし、メンバーたちの独立には大きなハードルが残されている。まず、残存契約期間(3~5年と推測される)と、契約解除に伴う巨額の違約金(300億円~600億円とも言われる)の問題だ。ADOR側は契約有効性を主張しており、法廷闘争に発展する可能性も高い。さらに、グループ名「NewJeans」の使用権もADORが保有しており、メンバーたちが今後、この名前を使って活動できるかどうかは不透明だ。
過去のK-POPグループの契約紛争(東方神起、KARA、EXOなど)を踏まえると、契約期間中の解除はグループ名の継続使用を困難にするケースが多い。しかし、契約満了後にグループ名を変更、もしくは旧所属事務所から使用許可を得て活動を継続する例もある。
今回のNewJeansの騒動は、K-POPアイドル業界の構造的な問題を浮き彫りにした。韓国はグローバル展開を進める中で芸能人の権利保護に関する法整備が進んでいるものの、それでも契約トラブルは後を絶たない。それは、タレントが声を上げやすい環境が整っている反面、旧来的な「ムラ社会」的な慣習も残っているという複雑な状況を反映していると言えるだろう。
アメリカのようにエージェント制が主流の市場とは異なり、韓国の芸能プロダクションは、タレントを「商品」として扱うビジネスモデルを維持してきた。このモデルはK-POPの成功に貢献した一方で、タレントの人権や尊厳を軽視するリスクも孕んでいる。
今後の注目点は、NewJeansの『ミュージックステーション』出演の可否、そして他のK-POPアーティストたちの反応だ。特に、同じHYBE傘下のBTSのメンバーからの発言が注目される。
NewJeansの決断は、K-POP、そしてアジアのエンターテインメント業界に大きな変化をもたらす可能性を秘めている。グループアイドルの商品性とアーティストの人権、この両立が今後の課題となるだろう。