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オーストラリア議会は、16歳未満の子どものSNS利用を禁止する画期的な法案を可決しました。アルバニージー首相は、この法案を「SNS運営会社の社会的責任を担保する世界でも先進的な取り組み」と高く評価し、運営会社への対応を強化する姿勢を示しました。
この法案は、SNS運営会社に16歳未満の利用者へのアクセス制限を義務付けるもので、違反した場合には、最大で約49億円の罰金が科せられます。一方、保護者や子ども自身への罰則はありません。
近年、オーストラリアでは、子どもたちのSNS依存による日常生活や心の健康への悪影響、いじめや性被害といった深刻な問題が社会問題化しており、規制を求める声が強まっていました。政府は、効果的な年齢確認方法を検討した上で、1年後をめどに法案を施行する予定です。
シドニーでは、法案への賛否両論が聞かれました。歓迎する声がある一方で、実効性への疑問も呈されています。14歳の男子生徒はSNSの中毒性を指摘し、規制の必要性を訴える一方、15歳の女子生徒は遠方の友人との連絡手段としてSNSを利用しており、禁止の影響を懸念していました。
世論調査では、国民の約77%が法案に賛成しており、背景にはSNSによる子どもの被害増加への懸念があります。政府は、これまでにもSNS運営会社に有害コンテンツの削除などを求めてきましたが、今回の法案は、より強固な規制を示すものと言えます。
メタ社は、年齢制限を尊重するものの、十分な協議がないまま法案が可決されたことに懸念を示しています。世界各国でも、子どものSNS利用規制に関する議論が活発化しており、フランスでは15歳未満のアクセス制限、アメリカの一部の州では保護者の同意が必要となっています。
しかし、ユニセフは、規制が子どもたちをより隠されたオンライン空間に追いやる可能性を指摘し、専門家も、SNS禁止は子どもの居場所を奪う可能性を懸念しています。年齢確認方法の検討など、課題は残されていますが、オーストラリアの取り組みは、世界各国におけるSNS規制議論に大きな影響を与える可能性があります。