老舗繊維メーカーのユニチカが、赤字続きだった繊維事業からの撤退を発表しました。主力銀行からの約430億円の債権放棄を受け、地域経済活性化支援機構による増資で経営再建を目指します。
1889年創業のユニチカは、日本の繊維産業発展に貢献してきましたが、近年は中国メーカーとの競争激化により、繊維事業は長年赤字が続いていました。そのため、収益性の高いフィルム事業(食品包装や半導体関連材料)に経営資源を集中させることを決定しました。
今回の撤退に伴い、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行などから約430億円の債権放棄を受け入れる見込みです。さらに、地域経済活性化支援機構による増資を行い、同機構が筆頭株主となります。現在の経営陣は原則として退任する予定です。
ユニチカの上埜修司社長は記者会見で、「自助努力では困難な状況」と説明。構造改革を繰り返してきたものの、抜本的な改善には至らず、金融機関との調整が可能な地域経済活性化支援機構の支援を必要としたと述べました。
繊維事業については、来年8月までに譲渡先を決めることを目指し、交渉が不調に終わった場合は事業清算に移行するとしています。上埜社長は従業員の雇用維持に最大限配慮すると強調しました。
地域経済活性化支援機構の渡邊社長は、ユニチカの製品が地域経済に大きな影響を与えていることから、事業再生支援を決めたと説明。ユニチカの高い技術力と競争力を評価しています。
ユニチカは、かつては「ニチボー」として東京オリンピックのバレーボール女子日本代表チーム(東洋の魔女)を支援するなど、日本の歴史に名を刻んできました。しかし、時代の変化に対応できず、苦渋の決断を下すこととなりました。今後、フィルム事業の成功が、ユニチカの再生を左右することになります。